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王制を敷く個人的備忘録

平成22年(ネ)第・・・・号
控 訴 人 
被控訴人 ●○株式会社

           控 訴 理 由 書

名古屋高等裁判所 民事第◆部    御 中
      2010年6月  日

控訴人訴訟代理人
弁護士

   目   次

第1 最高裁判所平成21年1月22日判決違背
1 控訴人の取引履歴と契約書の返還状況
2 原審判決の内容
3 取引の終了時点の解釈の誤り
第2 過払金返還請求の消滅時効の起算点?取引の終了時とは基本契約の終了時
1 1月22日判決が判示した過払金返還請求権の消滅時効の起算点
2 基本契約が継続している限り、新たな借入金債務の発生が見込まれる
(1)通常一般の基本契約の性質
  ア.諾成的金銭消費貸借契約?将来の貸付けの予定(貸付義務)
  イ.基本契約に定められた貸付義務
(2)貸金業法上も貸付義務が認められている
(3)基本契約が終了しないかぎり、取引は終了しない
第3 自動更新規定により基本契約は終了していない
1 原審判決の判断の遺脱
2 基本契約の自動更新条項
3 更新拒絶の意思表示も契約書の返還の証明もないこと
第4 取引の終了時=基本契約の終了時とは
1 基本契約の終了原因?過払金の精算合意、信頼関係の破壊(過払金の請求、信用状態が終局的段階に至った時)
2 基本契約の終了原因??合意による終了(契約解除と引直計算による清算合意)
(1)制限超過貸付による過払金返還義務の発生
(2)基本契約終了時における残債務・過払金の清算の必要性
(3)過払金充当合意により,取引の終了時(基本契約の終了時)に過払金の清算が必要となる
3 基本契約の終了原因??合意によらない終了(信頼関係が破壊される事由の発生)
(1)貸付義務・過払金返還義務と借入金返還義務が対立一体となった法律関係
(2)基本契約上の貸主の義務(貸付義務と過払金返還義務)
(3)基本契約上の借主の義務(借入金返還義務)
(4)貸付義務・過払金返還義務と借入金返還義務が一体となった法律関係が築かれ経済的に相互依存が強固な状態債務関係が構築されること
(5)信頼関係破壊の法理の適用
(6)信頼関係崩壊の具体的事情?借主の信用状況の悪化もしくは過払金返還請求
(7)補・債務全額の弁済で基本契約は終了しない
第5 本件へのあてはめ?過払金の清算も信頼関係の破壊もない
第6 長期間取引がなかったことをもって、約定完済日に取引が終了していたことを認定することは許されない
1 空白期間が長期であることは、取引が終了していたことの理由とならない
2 約定完済時に次の借入れの想定はできない

第● 被控訴人アコムも控訴人も基本契約を「解約」処理していない
1 控訴人らの基本契約は継続していた
2 被控訴人の解約処理の方法
(1)取引履歴の「解約」「カイヤク」の表示
(2)「SYS」の記載表示?契約内容の変更・金利の修正
3 控訴人▲
(1)「カイヤク」の記載のないこと
(2)「SYS」の記載があること

第1 最高裁判所平成21年1月22日判決違背
1 控訴人の取引履歴と契約書の返還状況
 控訴人は、平成4年7月22日、被控訴人と基本契約を締結して継続的金銭消費貸借取引を開始し、平成5年6月18日、約定利息で計算した元本と利息の全額を支払った(以下、「約定完済」という。)。

2 原審判決の内容
 原審判決は、「約定利息に基づく元利金を完済するために、平成5年6月18日、27万8317円を返済したこと、その後は現在にまで長年にわたって、原被告間に具体的な取引がなかったこと」から最終取引日である平成5年6月18日をもって、取引が終了したと判断した。

3 取引の終了時点の解釈の誤り
 原審は、控訴人が約定完済した事実およびその後10年間以上取引が行われなかった事実を考慮し、約定完済日をもって、控訴人と被控訴人との金銭消費貸借取引の終了を認定し、消滅時効の起算点としている。しかし、かかる認定は基本契約を締結して行う継続的金銭消費貸借取引の終了時の認定として、最高裁平成21年1月22日判決(民集63号1号228頁)(以下、「1月22日判決」という)に反している。
 また、被控訴人自らが作成した基本契約書(甲9)に、自動更新規定があることを無視し、自動更新規定について何らの判断をせず、被控訴人に一方的に有利な判断をした。
第2 過払金返還請求の消滅時効の起算点?取引の終了時とは基本契約の終了時
1 1月22日判決が判示した過払金返還請求権の消滅時効の起算点
 過払金の消滅時効の起算点について判示した1月22日判決は、「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、」「同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と判示した。
 そして、取引の終了時を画する準則として、「基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点」と表現した。
 そこで、控訴人と被控訴人との基本契約に基づく継続的金銭消費貸借取引において、いつの時点で新たな借入金債務の発生が見込まれなくなり、取引が終了するのか問題となる。

2 基本契約が継続している限り、新たな借入金債務の発生が見込まれる
(1)通常一般の基本契約の性質
  ア.諾成的金銭消費貸借契約?将来の貸付けの予定(貸付義務)
 消費者金融業者及び信販会社(クレジット会社)の金銭消費貸借契約において多く採用されている借入限度額を定めて繰り返し貸付けと返済を行うことが予定されている金銭消費貸借契約では,当初の基本契約書において,借入限度額,利率,利息の計算方法,毎回の返済額,返済日等の取引条件の合意があるのみで,実際の金銭の交付はない。
 このような基本契約を締結して行う金銭消費貸借契約は,借入金の返還合意と現実の金銭の交付は時間的に離れており,要物契約である金銭消費貸借契約でなく,要物性の求められない無名契約としての諾成的金銭消費貸借契約である。
 たとえばクレジットカード会員契約の場合は,会員契約の締結をしてもその場で直ちに金銭が交付されることはなく,契約を締結した後にクレジットカードが郵送され,そのカードを利用して借入れをするので,消費貸借契約と金銭の交付が分離していることは明白である。
 本件のような消費者金融の場合は,店頭で基本契約を締結すると直ちにATMカードが交付され,借入限度枠一杯の金銭の交付を受けることが可能であるが,これとて基本契約中の貸主の貸付義務の履行として金銭が交付されているにすぎず,金銭消費貸借契約の成立要件として金銭が交付されるのではない。仮に消費者金融と基本契約を締結したときに金銭の交付がなくとも金銭消費貸借契約は成立している。
  イ.基本契約に定められた貸付義務
 貸主には,借主の請求に応じて,借入れ限度枠の範囲で貸付義務が存在し,常に将来の貸付けが予定され,見込まれている。
 基本契約を締結した時点では,貸主は借入限度額上限までの貸付義務を負担している。借入れと返済が繰り返されて借入残高が増減すると,これに応じて貸主が貸付義務を負う具体的金額が借入限度額の範囲で増減する。債務を約定完済することは基本契約の終了を意味せず,貸主の貸付義務の金額が借入限度額まで広がったことを意味するに過ぎない。
 したがって,個々の貸付けは,基本契約に定められた貸主の貸す義務の履行である。借入限度枠内であれば、改めて金銭消費貸借契約を締結しなくても、ATMカード一枚でいつでも自由に何回でも借入れができる根拠は,貸主に貸付義務があるからにほかならない。
 したがって、基本契約が継続し、貸主が貸付義務を負担している限り、「基本契約に基づく新たな借入金債務の発生は見込まれ」ていることを否定することはできない。
(2)貸金業法上も貸付義務が認められている
 1月22日判決のいう「基本契約」は、平成18年改正貸金業法2条7項に定められた「極度方式基本契約」に他ならない。すなわち、「顧客によりあらかじめ定められた条件に従った返済が行われることを条件として、当該顧客の請求に応じ、極度額の限度内において貸付けを行うことを約するもの」と定められている。
 「顧客の請求に応じ」「貸付けを行うことを約する」とは、基本契約上の貸主の貸付義務を認めたことに他ならない。
(3)基本契約が終了しないかぎり、取引は終了しない
 以上のように、基本契約を締結して行う継続的金銭消費貸借取引においては、基本契約上、貸主は貸付義務を負担している。基本契約が終了しない限り、貸付義務は消滅せず、将来の新たな借入金債務の発生が想定されている。
 「基本契約に基づく新たな借入金債務の発生は見込まれなくなった時点」とは、基本契約が終了して、貸主の貸付義務=借主の借りる権利が失われたときである。
 したがって、1月22日判決のいう「取引の終了時」とは「基本契約の終了時」ということになる。
 基本契約が継続しているのに、基本契約の終了時を認定せずに、取引の終了を認定することは、最高裁1月22日判決に違背している。
第3 自動更新規定により基本契約は終了していない
1 基本契約の自動更新条項
 被告作成の金銭消費貸借基本契約書(甲●)の第5条によれば、契約の有効期間は、「本契約書の有効期間は、本契約日から5年間とします。但し、契約書有効期間満了までに当事者から何ら申し出もない場合は、更に契約を5年間自動継続することができるものとし、以後もその例によります。」とある。

2 更新拒絶の意思表示も契約書の返還の証明もないこと
 原告はもちろん、被告も本件取引につき平成5年6月18日に約定完済したのち、契約更新の拒絶の申し出をした事実はない。
 したがって、本件では「基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点」には至っておらず、最終取引日から提訴日に至るまでいつでも借入ができる状態であった。基本契約は、本訴提起に至るまで継続しており、未だ過払金の消滅時効期間は経過していない。

3 原審判決の判断の遺脱
 原審は、控訴人と被控訴人の間で締結された金銭消費貸借基本契約書の自動更新規定の適否について、何ら判断していない。
 自動更新規定がありながら、約定完済時に取引が終了したと判断する根拠は、どこにあるのか。仮に当審においても控訴人の請求を退けるのであれば、自動更新規定の存在にもかかわらず、如何なる理由によって取引が終了したと判断したのか、明確に判示するよう強く求める。
第4 取引の終了時=基本契約の終了時とは
1 基本契約の終了原因?過払金の精算合意、信頼関係の破壊(過払金の請求、信用状態が終局的段階に至った時)
 では、基本契約は、如何なる場合に終了するのか。
 約定完済日に控訴人から解約の申し出をした事実はない。
 継続的な金銭消費貸借取引の基本条件を定めた基本契約の終了の認定は、厳密になされなければならない。基本契約も契約である以上、その終了には、合意によって取引を終了させるか、あるいは合意によらずに契約が終了する事由が発生する必要がある。
 結論としては、合意による終了としては,?基本契約の解除の合意と法定金利で引直計算を行い,残債務もしくは過払金の清算合意が必要である。清算合意がない限り、取引は終了しない。
 合意によらない終了事由としては、?当事者の信頼関係が崩壊すること(債務整理の開始,破産申立など借主の信用状態が終局段階に入るか,過払金の返還請求)である。
 以上の?ないし?の事由がない限り,基本契約は修了せず継続している。
 控訴人は,約定完済した時点で、過払金を清算した事実も,本件過払金の請求をするまで信頼関係が破壊された事実もない。したがって控訴人が本件過払金の請求をするまで基本契約は終了していない。
 以下,基本契約を締結して行うリボルビング返済方式の金銭消費貸借契約の特質に遡って検討し,基本契約の終了事由が?,?に限られ,本件過払金返還請求権が時効により消滅していないことを述べる。

2 基本契約の終了原因??合意による終了(契約解除と引直計算による清算合意)
(1)制限超過貸付による過払金返還義務の発生
 被控訴人を含め消費者金融会社の行う貸付けは,利息制限法1条1項所定の制限利率を超えた利息を約定利息とする金銭消費貸借契約である。制限利率を超えた制限超過部分の利息の支払いは,順次元本に充当され(最大判昭39.11.18・民集18巻9号1868頁),元本完済後の支払は不当利得となることは確定した判決である(最大判昭43.11.13・民集22巻12号2526頁)。元本完済後の支払いは不当利得として返還義務があることは,40年以上に及ぶ最高裁の蓄積および貸金実務で定着している。
 金銭消費貸借契約締結後,正常な取引が継続すれば,将来,元本および約定利息による利息金が完済されることは契約締結時の大前提である。貸倒れを避けるため貸金業者は,基本契約を締結するに際して借主の信用状態を調査審査し,正常に返済と借入が繰り返され,取引が続くことを期待している。弁済事故が発生し,貸倒が生ずることはむしろ想定外である。
 約定利息による正常な取引が継続することを前提としている以上,制限超過貸付では,将来のいずれかの時点で元本が完済に至り,元本完済後の支払いは不当利得となり過払金が発生することは当然の因果の流れであり,必然の結果である。
 したがって,制限超過利息を約定利息とする金銭消費貸借契約では,将来において過払金が発生することは契約を締結する時点で想定されており,基本契約の内容となっている。厳密に言えば,貸金業法43条1項が適用される場合を除き,貸主に過払金返還義務(過払金返還債務)が発生することが金銭消費貸借契約(本件では基本契約)の合意内容となっているといえる。
 過払金が発生することは,利息制限法により,利息の契約が利息制限法1条1項所定の法定利率まで強行法的に変更されることの効果でもある。
(2)基本契約終了時における残債務・過払金の清算の必要性
 一般的に継続的契約関係の場合,契約解除による遡及効は生じないものの,契約関係を終了させるためには相互の債権債務関係を清算する必要がある。
 基本契約を締結して行う金銭消費貸借契約において借入金が発生することは当然である。また,上述したように制限超過利息を約定利息とする金銭消費貸借契約では,将来において過払金が発生することが想定され,過払金返還義務が生じることは基本契約の内容となっている。
 基本契約が継続している間は,貸付金額もしくは過払金額は発生消滅・増減を繰り返して債権額が確定しない。残債務額あるいは過払金額をその時々において算出することは可能であるが,契約当事者間の権利関係が確定するのは,その後の新たな借入金債務の発生もしくは返済が見込まれなくなった基本契約の終了時点である。
 そして,契約関係を終了させて権利関係を確定する上では,法定利率で引直計算を行い,借入金債務の残額,無効な超過利息の支払を清算することは必須である。
 契約解除の合意とともに制限超過支払部分の清算のため,利息制限法所定の法定利率で引直計算を行い,借入金あるいは過払金の清算合意が行われた時点ではじめて基本契約が終了する。
(3)過払金充当合意により,取引の終了時(基本契約の終了時)に過払金の清算が必要となる
 1月22日判決は、その理由の中で,過払金が発生した場合の当事者の合意内容として,「基本契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する借入金債務に充当する旨の合意(過払金充当合意)」があると判示した。
 そして,充当後の処理については,「一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借契約取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれている」とした。
 基本契約が継続している間は,新たな借入金債務が発生することが見込まれる以上,取引の終了時とは,基本契約の終了時ということになる。
 したがって,1月22日判決は,基本契約が終了した時点で,過払金返還請求権を行使すること=過払金の清算をすることが,過払金充当合意に含まれ,基本契約の内容となっていると判示したのである。
 上記1月22日判決の担当調査官であった中村心調査官も,同判決を解説した判例タイムス1289号78頁(ジュリスト1383号182頁も同じ)で,「本件判決は,この過払金充当合意の内容をさらに敷えんし,取引の継続中は,発生した過払金につきその都度返還請求権を行使するのではなく,過払金は将来の債務に充当するため温存し,取引終了時に清算するというのが契約当事者の合理的意思解釈であり,過払金返還請求権の清算方法及び清算時期につき取引終了時とする旨の内容が含まれているものと解し,それまでは法律上の障害があると判断したものと考えられる」と述べ,1月22日判決の帰着として,過払金充当合意を含む基本契約には,取引終了時に過払金の清算を行う合意があることを認めている。
 これを裏返して言えば,基本契約の終了にあたっては,過払金の清算をなすことが契約当事者の意思であり,過払金の清算がなされていない場合は,なお金銭消費貸借取引が継続していると解するほかない。

3 基本契約の終了原因??合意によらない終了(信頼関係が破壊される事由の発生)
(1)貸付義務・過払金返還義務と借入金返還義務が対立一体となった法律関係
 基本契約を締結して行う継続的金銭消費貸借契約では,貸主に貸付義務が生じる(本理由書第2)。また金銭消費貸借契約が利息制限法1条1項所定の法定利率を超える制限超過貸付である場合は,過払金返還義務が生じることが基本契約の合意内容となっている(第4、2)。
 一方,金銭消費貸借契約である以上,借主には,貸金の返還義務がある。
 この双方の義務が一体となった包括的な契約関係が,基本契約を締結することによって築かれている。契約が継続している間は,貸付義務の履行,返済義務の履行がなされ,それぞれの支払いは差引計算されて,借入残債務もしくは過払金額は増減消滅を繰り返し確定しない。
(2)基本契約上の貸主の義務(貸付義務と過払金返還義務)
 基本契約が、諾成的金銭消費貸借契約であり、貸主に貸付義務があることは、本理由書第3で述べた。
(3)基本契約上の借主の義務(借入金返還義務)
 金銭消費貸借契約上,借主が貸金返済義務を負うことは当然である。
 基本契約書においても,借主は約定の条件(利率・利息の計算方法・毎回の返済金額・返済日等)に従って借入金の返還義務を負うことを定めている。
(4)貸付義務・過払金返還義務と借入金返還義務が一体となった法律関係が築かれ経済的に相互依存が強固な状態債務関係が構築されること
 金銭消費貸借契約であることから借主には返済義務が生じ,諾成的金銭消費貸借契約と制限超過貸付であることから貸主には貸付義務と過払金返還義務が生じている。
 このように基本契約を締結して行う継続的金銭消費貸借契約では,貸主の貸付義務,過払金返還義務と借主の借入金返還義務が結合した一つの包括した法律関係が形成される。
 しかも,借入限度額の範囲で何度でも自由に借入れができる契約形態であるから,借主と貸主の相互の依存関係は,より強固なものとなる。すなわち貸主は継続して利息収益を得ることを期待し,他方借主は資金需要の必要性が生じればいつでも即時に借りられることを期待している。特に制限超過利息の借入れを余儀なくされている借主は,毎回の最低弁済額を返済した後,借入限度額が広がり次の借入れができることに強い期待を寄せている。貸主も無担保小口の貸付であることから,経営を維持するために長期の取引関係が築かれるようにビジネスモデルを考案し,一度獲得した顧客を逃すことなく,借入限度額に余裕ができると追加借入の勧誘を欠かさない。
 こうした貸主と借主の相互の債権債務が組み合わさり,いわゆる「状態債務関係」が形成され,その契約関係は,一方当事者の都合だけで軽々易々とは終了することはなく,継続する。
(5)信頼関係破壊の法理の適用
 信頼関係破壊の法理は,継続的契約関係にある当事者間で債務不履行が生じても,契約関係を支配する相互の信頼関係が破壊されるに至るような債務不履行でない限り,解除権の行使は信義則上制限されるという法理である。
 信頼関係破壊の法理は,もともとは賃貸借契約において論ぜられた法理であるが,当事者間の経済的な結合依存関係が強く,契約の終了によって一方当事者が契約関係から離脱する利益と他方当事者が被る損害が均衡を失する場合に一般に適用が可能な法理である。
 基本契約を締結して行う金銭消費貸借契約では,貸主は借主の返済能力を信頼して,長期間継続的に貸付けを繰り返す。また借主も貸金業者が借入限度額の範囲で貸付けをしてくれることを信用して毎月の弁済計画を立てて,翌月の貸付けを期待して返済を長期間に渡って反復継続する。
 基本契約に基づく金銭消費貸借取引は,返済義務に従って借主が返済してくれる,貸付義務にしたがって貸金業者が貸付けをしてくれるという相互の信頼関係を基礎として成立し,経済的な依存関係の強い継続的な債権債務関係と言うことができる。当然,貸主と借主の当事者相互は将来にわたってそれぞれの義務が履行されるであろうという信頼と期待を抱いている。
 したがって,基本契約を締結して行う金銭消費貸借契約には,信頼関係破壊の法理を適用することが可能であり,そうすべきである。
(6)信頼関係が崩壊の具体的事情?借主の信用状況の悪化もしくは過払金返還請求
 リボルビング返済方式の金銭消費貸借契約は,借入限度額の範囲で貸付と返済を反復継続して行わせ,長期にわたって利息収益を得るために考案されたビジネスモデルである。基本契約は継続することが原則であり,易々とは終了しない。
借主,貸主間の信頼関係が破壊される事由(それぞれの貸付義務・借入金の返済義務の履行が期待できない事由)が生じたときに,初めて状態債務関係が終了(=基本契約の終了)することになる。
 基本契約は、弁護士による?債務整理,破産,再生の申立,強制執行を受けるなど借主の信用状態が悪化し終局的な破綻段階に至り,返済義務の履行が望めなくなった時に終了する。
 また,?借主から過払金の返還請求があれば,当然基本契約は終了する。過払金の請求がありながら,なお貸付けを行う貸金業者はあり得ないし,返済を続ける借主もない。過払金返還請求を契機として基本契約に定められた貸付義務,返済義務を履行する信頼関係は崩壊するからである。
 逆に,過払状態に至っていても,借主が利息制限法による引直計算を求めず,制限超過利息の支払いが期待できる間は,貸付義務と返済義務の履行が期待できる信頼関係は維持されているので基本契約は終了しない。
(7)補・債務全額の弁済で基本契約は終了しない
 念のため述べれば,基本契約を締結して行う諾成的金銭消費貸借契約では,債務の全額を返済したことをもって,基本契約が終了することはない。
 基本契約を合意によって終了させるためには,過払金の清算合意がなされることが必要なことは上述したとおりである。
 加えて,債務全額の弁済は,基本契約に従った債務が履行された結果であり,貸主と借主間の信頼関係は破壊されているどころかその信頼関係は深まっている。
 基本契約を締結して行う金銭消費貸借においては,借入限度額内であれば,何度でも借入れと返済を繰り返すことができる以上,約定に従い債務全額を返済したことの意味は,新たな借入限度額が満額にまで広がったこと,すなわち貸主の貸付義務の具体的金額が上限金額に戻ったことを意味するに留まる。基本契約が終了したことを意味しない。そして,債務の全額を弁済した後の取引の空白期間は,借主が貸金業者に対して貸付義務の履行を求めなかった期間にすぎない。
 現実的に考えても,貸金業者にとって,約定の債務全額を返済した顧客は優良顧客であり,敢えて基本契約を終了させ一度獲得した優良顧客を手放すような愚策をとるはずもない。債務全額の返済は顧客の信用を高める事情として継続的消費貸借契約関係を強固にする理由にこそなれ,契約終了の原因とはならない。
 この点,クレジットカードは顕著であり,カードを利用することなく残高がゼロ円である期間が何年あろうと契約期間である3年あるいは5年経過した時点で契約が自動更新され,契約書を作成することも旧カードを回収することもなく,新クレジットカードが顧客のもとに送付されてくる。
 従って,債務全額の返済をもって包括契約が終了することはない。 第5 本件へのあてはめ?過払金の清算も信頼関係の破壊もない
 本件で、控訴人は、平成4年7月22日、被控訴人と基本契約を締結して、平成5年6月18日、約定完済した。約定完済した時点で過払金の清算はなされず、また控訴人訴訟代理人が債務整理に着手するまで、控訴人と被控訴人との信頼関係を損なうような事実も発生していない。したがって、約定完済日には基本契約は終了していない。
 そして、控訴人と被控訴人との金銭消費貸借取引は、控訴人訴訟代理人弁護士が債務整理に着手した時点、すなわち取引履歴の開示を依頼する旨の「ご通知」と題する書面が被控訴人に到達した(当事者の信頼関係が破壊された)時点で終了した。
 したがって、控訴人広瀬の被控訴人に対する過払金債権は、取引の終了時点から未だ10年を経過していないから、時効消滅していない。
第6 長期間取引がなかったことをもって、約定完済日に取引が終了していたことを認定することは許されない
1 空白期間が長期であることは、取引が終了していたことの理由とならない
 原審判決は、「約定利息に基づく元利金を完済するために、平成5年6月18日、27万8317円を返済したこと、その後は現在にまで長年にわたって、原被告間に具体的な取がなかったこと」から最終取引日である平成5年6月18日をもって、取引が終了したと判断した。
 かかる理由付けにより、約定完済時を過払金の消滅時効の起算点とする下級審判決が頻出しているが、約定完済日から、次の借入までの期間を考慮して、約定完済日に取引が終了していたかどうかを判断する手法は論理的に破綻している。

2 約定完済時に次の借入れの想定はできない
 約定完済して、1か月後に再借入れをするか、1年後に再借入れをするか、5年後に再借入れをするか、さらには10年後に再借入れをするかは、当然のことながら約定完済するときに予想することは不可能である。
 数十万円程度の消費者金融、クレジット会社からの借入れは、数年間の資金計画を策定して借入を起こす事業資金等と異なり、その時々の消費者の資金需要の要否に左右されるもので、取引が終了していたかどうかと何らの関連性もない。
 例えば二度と消費者金融から借入をしないと決意しながら(すなわち基本契約を解約しながら)、1か月後に再び借入をしてしまう者もあれば、恒常的に低収入で困ったときにはいつでも借りようと考えて約定完済しながら(すなわち基本契約を継続させながら)、資金需要が生じず10年以上にわたって借入をしない場合もある。
 すなわち、1か月後に再借入れがされるか、10年以上の間、再借入をしないかは、取引の終了、基本契約の終了とは関係がない。
 取引が終了したかどうかは、約定完済したときの当事者の意思によって判断すべきであって、その後の空白期間の長短で判断することなどできない。
 したがって、約定完済後、10年以上にわたって取引が再開されなかった理由は、控訴人に資金需要の必要がたまたま生じなかったからに過ぎず、取引が終了していたからではない。
以  上


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第● 被控訴人アコムも控訴人も基本契約を「解約」処理していない
1 控訴人らの基本契約は継続していた
被控訴人は、顧客が約定完済した時点で、顧客から解約の申し出がなければ、基本契約を終了させることはないと主張する。そして基本契約を解約した場合は、取引履歴に解約処理した旨の記載をするという。
 この主張にしたがって、被控訴人から開示された控訴人らの取引履歴を検討するとき、以下述べるように、控訴人らの基本契約は、約定完済日に解約処理されておらず、控訴人ら代理人が債務整理開始の通知をするまで、継続していたことが判明する。
 したがって、控訴人ら代理人が被控訴人に対して、債務整理の開始の通知をするまで基本契約は終了しておらず、ひいては金銭消費貸借取引も終了しておらず、控訴人らの過払金返還請求権は時効消滅していない。

2 被控訴人の解約処理の方法
(1)取引履歴の「解約」「カイヤク」の表示
 被控訴人審査第二部東京第一公的センター所属の被控訴人社員作成の平成21年5月26日付け陳述書(甲●)によれば、被控訴人と顧客との一般的な取引について述べた部分において、大要「約定の借入金残高全額を返済することにより借入金残高がゼロになることはあるが、そのことによって被控訴人が直ちに当該顧客との間の基本契約を解約することはない。顧客が借入金残高全額を返済した上で、基本契約の解約を申し出てきた場合には、被控訴人はその申し出に応じて基本契約を解約処理する。逆に言えば、解約処理したということは顧客から解約の申し出があったということを意味する。例外的な場合以外は、約定に基づく継続的な取引を継続している通常の顧客の場合、借入金残高がゼロになったとしても被控訴人から勝手に基本契約を解約するなどということはありえない。」
「被控訴人が顧客から基本契約を解約する旨の申し出を受けた場合、被控訴人は顧客との取引等を管理するコンピュータ処理において『解約登録』とのデータ入力・解約処理を行う。解約処理をすると、取引記録としては『テントウカイヤク』との記録表示がされる。従前当該顧客に交付していたキャッシングカードはその時点から利用できなくなる」旨、述べている。
 被控訴人審査第二部大阪公的対応センターの被控訴人社員作成の平成20年9月19日付け陳述書(甲●)では、「以上のような解約手続を行うことで、当社とお客様との取引は完全に終了したということになります」と明確に述べている。
 以上の事実を総合すると、被控訴人は顧客が借入金残高を全額弁済しても直ちに解約することはないこと、顧客から解約の申し入れがあった場合にのみ解約処理をし、解約処理をすると顧客に開示される取引履歴の区分欄には、「解約」「カイヤク」と表示されることがわかる。
(2)「SYS」の記載表示?契約内容の変更・金利の修正
 さらに、控訴人▲のお取引明細書には、約定完済日以降の列の区分欄に「SYS」との記載がある。
 被控訴人作成の「お取引明細書の記載内容について」(甲●)によれば「SYS」とは「法律改正等で取引条件の一部を変更した記録です」とあり、お取引明細書の「SYS」の右隣の区分欄には「利変」と表示されていることを併せ考えれば、法律改正の影響により利率を変更したことを意味するものと考えられる。そもそも、控訴人▲と被控訴人との金銭消費貸借取引が終了していれば、取引条件の変更などあり得ないのだから、このような記載の必要はない。
 この「SYS」記載は、約定完済日以降も取引がなお継続し、終了していないことを端的に示したものといえる。
 さらにいえば、別訴において顧客に開示された取引履歴(甲●)では、約定完済日であるお取引日「H151229」の列の区分欄に「解約」の記載表示があり、解約処理されたと理解できるところ、解約処理された場合、「H180626」「SYS」「利変」との記載表示はない。すなわち、取引が解約されており取引条件の変更はありえないため、その記載表示がないないのである。

3 控訴人▲
(1)「カイヤク」の記載のないこと
 本件控訴人▲についてみると、控訴人訴訟代理人に対して開示された取引履歴(甲●)には約定完済日にあたる取引日「H100703」の列の区分欄に「解約」ないしは「カイヤク」の記載表示がない。すなわち、控訴人▲が平成10年7月3日に約定完済した際、被控訴人に対して解約の申し入れをしなかったこと、及び被控訴人としても解約処理をしなかったことがわかる。
(2)「SYS」の記載があること
 約定完済日から隔たること約8年後の取引日「H180626」の列の区分欄には「SYS」「利変」との記載があり、約定完済から8年後に法律改正の影響を受けて利率を変更したことが読み取れる。そもそも、控訴人▲と被控訴人との間の取引が終了していれば、取引条件の変更などあり得ない。
 この記載は、控訴人▲と被控訴人との間の取引は平成10年7月3日の約定完済によって終了せず、平成18年6月26日の時点においても取引が継続していたことを端的に示すものといえる。
 控訴人▲と被控訴人との取引は約定完済日に終了しておらず、その後も継続していたことは明らかである。
 したがって、控訴人▲の被控訴人に対する過払金債権は、取引の終了時点から未だ10年を経過していないから、時効消滅していない。
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